免疫寛容の成立に必須である自然発生型の制御性T細胞は胸腺で分化する。しかし胸腺内における制御性T細胞分化の分子基盤は不明な点が多い。これまでにNF-κBを活性化するシグナルが胸腺内の制御性T細胞の分化に関与することが明らかとなったが、その活性化を誘導する分子機構は不明である。国内の他のグループは、CD40が制御性T細胞の産生または維持に寄与することを報告した。一方申請者は、胸腺細胞内のTRAF6が制御性T細胞の分化に寄与すること、さらにReGeptor activator of NF-κB(RANK)が胸腺内制御性T細胞の分化においてCD40と重複して機能するとの予備的結果を得た。本研究は胸腺内での制御性T細胞分化におけるRANK/CD40およびTRAF6のシグナルの役割解明を目指す。 本年度はまずRANKとCD40が胸腺のどの細胞であるかを免疫組織学的に解析した。その結果、ほとんどのRANKとCD40は胸腺髄質に発現しており、さらに髄質の上皮細胞と樹状細胞であることがわかった。従って胸腺細胞で固有のTRAF6の欠損はRANKとCD40のシグナル異常では説明できず、RANK/CD40による制御性T細胞の分化制御と分けて研究を進めることにした。そこでまず胸腺細胞でTRAF6の上流で機能するレセプターを検討した。T細胞抗原レセプタ-(TCR)刺激依存的なシグナルの異常をTRAF6欠損胸腺細胞で検討したところ、TCR刺激依存的なIkBaの活性化やJNKの活性化がTRAF6欠損胸腺細胞ではほとんど起きなかった。一方でERKやAktの活性化はTRAF6欠損により若千上昇した。これらの結果は胸腺細胞ではTRAF6はTCRシグナルの下流で機能することで制御性T細胞の分化を制御することを強く示唆している。
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