研究概要 |
病原体センサーであるToll-like receptor(TLR)は非自己である病原体を直接認識することで、獲得免疫の活性化を誘導する。B細胞では抗原受容体と相乗的に機能することで抗原に対するB細胞応答に大きく影響を及ぼす。TLR7/TLR9がDNAやRNAに対する自己抗体産生に貢献し、自己免疫疾患に関与していることがモデルマウスにおいて示されている。マウスB細胞はTLR7/9以外に、TLR2, TLR4, RP105を発現しており、これらのTLRが自己免疫疾患に関わっているのかどうかは明らかではない。この点を検討するために、我々は自己免疫疾患モデルマウスであるMRL/1prにRP105ノックアウト(KO)マウスを掛け合わせ、解析した。RP105が欠損すれば、B細胞においてTLR4、TLR2、ともに機能低下することを我々は報告しており、RP105KOマウスを使うことで、B細胞においてTLR4、TLR2、両方の機能が低下した場合に自己免疫疾患がどう影響されるか検討できる。その表現型を調べた結果、疾患は軽減することが明らかになった。興味深いことに、自己抗体産生や糸球体腎炎には変化がなかったが、腎臓の血管炎の頻度が低下しており、リンパ節の腫大も軽減していた。TLR7、TLR9が核酸に対する自己抗体産生に関わっているのに対して、RP105/TLR4/TLR2は、自己抗体産生には直接かかわらないことが明らかとなった。今後、これらのTLRがいかにして、MRL/1prの自己免疫疾患の病態に関わっているのか、明らかにしてゆく必要がある。
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