マウスにLPSを投与すると血中のIL-7濃度が有意に上昇することがわかった。IL-7がどの臓器に由来するかを調べるためにLPS刺激後に多くの臓器中のIL-7mRNAを調べた。その結果、LPS刺激後にIL-7mRNA産生が増強されるのは肝臓と腎臓のみであった。肝臓は体内の臓器中でも最も大きな臓器なので臓器重量を考えるとLPSによるIL-7分子の血中での増加は肝臓由来であることが予想できた。肝臓を2/3切除するとIL-7分子がほとんど認められなくなる事からLPS依存性に肝臓からIL-7が産生されている事が証明できた。さらに、肝臓の初代培養細胞を用いた実験から肝細胞からのIL-7の発現はLPSでは生じずに1型インターフェロンを通じて起こることがわかった。実際にLPS刺激に続くTRIF経路由来の1型インターフェロンの産生がIL-7を産生する事がノックアウトマウスを用いてマウス生体でも証明された。 IL-7に対するshRNAとハイドロダイナミック法を組み合わせて肝臓でのIL-7分子のノックダウンに成功したので、LPS刺激後の肝臓由来のIL-7の役割を解析した。LPS刺激後の肝臓からのIL-7産生によってT細胞数の増加が誘導された。さらに活性化CD8+T細胞の維持にもLPS刺激後の肝臓からのIL-7産生が寄与していることがわかり、生体内でのCD8+T細胞のキラー活性の上昇にも関与していた。さらに、TLRリガンド刺激後の肝臓からのIL-7産生によって実験的脳脊髄炎を誘導するCD4+T細胞の数が維持されていることが明らかとなり、肝臓からのIL-7産生を抑制する事で病気の発症が抑制される事が判った。 本研究によってこれまで外来の刺激には反応せずに生体内の発現量が一定と考えられていたIL-7分子が肝臓からTLRリガンド刺激を介する1型インターフェロン発現にて生じる事が証明された。実際に、肝臓由来のIL-7にてT細胞の反応性が増強する事が示されたので、今後、肝臓由来のIL-7の発現制御を通じて効率的なワクチン作成、自己免疫疾患等の治療に大きく貢献できる事が示唆された。
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