私たちは、線維芽細胞にてIL-6信号によって生体内のIL-7の発現量が制御されていることを示すことができた。最近、"LPSが肝細胞からIL-7を免疫細胞由来のTRIF=>IFNβを介して誘導してT細胞の反応性を亢進させる"ことを発見し、論文に発表した(Immunity 2009)。今年度は以下の2つの点に関して実験を行った。 (i) LPSあるいは他のTLRリガンドの刺激にて肝臓から発現されてT細胞の反応性に大きな影響を与えるIL-7以外の分子を同定することを目的にDNAアレーから自己免疫誘導時に肝臓にて発現する可溶性分子を同定した。これまでに約20個の分子を肝臓にて強制発現させてT細胞の分裂能を指標に解析した。その結果、2つの分子を強制発現させた場合にT細胞の分裂が促進した。現在、それらの分子に関して肝臓特異的にノックダウンさせたときのT細胞依存性自己免疫疾患の発症を解析している。 (ii) マウス生体へのTLRリガンド刺激にて肝臓からのIL-7発現は上昇したが、脾臓およびリンパ節からのIL-7の発現は減少した。脾臓あるいはリンパ節では線維芽細胞が主にIL-7を産生している事が知られている。肝臓と線維芽細胞でのIL-7発現制御メカニズムを比較解析して『なぜ、脾臓およびリンパ節にてTLRリガンド刺激後にIL-7の発現が低下する必要が有るのか?』を解析している。各種ノックアウトマウスをLPS刺激してリンパ節からのIL-7発現を解析した。現在までに25種類のノックアウトマウスにて解析を行ったが、その発現がLPS刺激前後に変化しない変異マウスは同定できていない。そのため、現在、SOCS3を線維芽細胞特異的にノックアウトしたマウスを作製してIL-7発現を解析している。
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