癌抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)誘導後の癌塊局所での生体反応が癌の拒絶に重要であると示唆されている。しかし、これまで樹立された癌を効率的に拒絶するモデルが無く、拒絶されていく癌塊局所での生体反応の解析は困難であった。申請者が開発した高率で癌を拒絶できる癌細胞死(アポトーシス)の誘導と免疫活性化を同時に行う抗体カクテル療法(trimAb:抗DR5抗体、抗CD40抗体、抗CD137抗体の併用)を用いて、癌抗原特異的な免疫反応の結果として拒絶される癌組織内で起きる生体反応と真のエフェクターメカニズムの解明を目的として研究を進めてきた。しかし一方で、アポトーシスに至った細胞の貪食は免疫抑制(トレランス)の誘導に至るとの多くの報告があるため、抗腫瘍抗体等の治療による癌細胞死の過剰な誘導は、逆に抗腫瘍免疫反応を抑制し、免疫反応による癌拒絶を阻害する可能性がある。そこで本年度は、アポトーシス細胞の貪食による免疫抑制(トレランス)誘導のメカニズムの解析を行った。その結果、CD8α^+樹状細胞によるTim-3を介したアポトーシス細胞の貪食により免疫抑制が誘導されることが示され、抗Tim-3抗体によるTim-3を介した貪食の抑制が、癌細胞に細胞死を誘導した後の抗腫瘍免疫反応を増強する可能性があることが示された。 また、免疫抑制分子を標的にした治療を併用した場合、所属リンパ節での免疫反応の増強よりも、癌局所へのCTLの浸潤の増加が腫瘍拒絶効率を高めることも示唆された。
|