T細胞依存性(T-D)免疫応答の際に、体細胞突然変異により胚中心に出現し得る自己特異的B細胞に対する自己寛容誘導機構についてはほとんど分かっていない。中枢性自己寛容においては未熟B細胞が出会う抗原はすべて自己抗原と見なされるが、胚中心においては免疫応答を誘導すべき外来抗原と寛容を誘導すべき自己抗原が共存するので、それらをB細胞が識別するための機構が必要であるが、その実態は不明である。そこでわれわれは胚中心反応を再現するin vitro実験系を構築し、これにより胚中心におけるB細胞の自己-非自己識別および寛容誘導の分子機構を明らかにしようとしている。これまでに、CD40LおよびBAFFを発現するフィーダー細胞(40LB)を作製し、その上でIL-4およびIL-21を順次用いて、IgG1あるいはlgEにスイッチした胚中心様B細胞を105倍にまで増殖させる培養系を確立した。IL-21培養後の細胞はマウスに移植すると長期生存形質細胞となり、IL-21を除いて2日間培養した後マウスに移植すると記憶B細胞となった。したがって、この培養系はin vivoの胚中心におけるB細胞の増殖・分化を反映していると思われる。この系を用いてハプテンNP特異的な抗原受容体の遺伝子導入マウスのB細胞を、NP-CGGを表面に提示させた40LB細胞上で培養することで、抗原刺激がB細胞の増殖・分化に与える影響を調べた。その結果、多価の岬による刺激はB細胞のアポトーシスと細胞周期抑制をもたらすことが分かった。今後はNPの価数およびNP-CGGの濃度を変えて、B細胞の陰性選択から増殖促進に転じるかどうかを調べる。また、生理的胚中心B細胞と上記胚中心様B細胞に共通に発現する受容体蛋白の発現プロファイルを基に、自己抗原認識による胚中心B細胞の陰性選択を回避させうるサイトカインあるいはT細胞表面リガンドを同定する。
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