研究概要 |
小腸とその関連リンパ系組織の樹状細胞(DC)の中には、レチノイン酸(RA)産生能を有するものが存在し、RAを介してリンパ球ホーミングと制御性T細胞/Th17細胞の分化を制御する。本研究では、DCにRA産生能を誘導するメカニズムを解明し、これを利用することで、種々の炎症性疾患に対する新たな治療法開発の基盤形成を目指した。まず、RA産生能を個々のDCで測定する方法を確立し、RA産生能を持っDCを同定した。ナイーブマウスではDCのRA産生能は酵素retinal dehydrogenase 2 (RALDH2, ALDH1A2)の発現に依存していた。その発現は、小腸および関連リンパ系組織の微小環境因子によって誘導されると考えられた。主な誘導因子としてGM-CSFを同定した。ナイーブマウスの腸間膜リンパ節(MLN)にはGM-CSF発現細胞として、少なくともマクロファージ様細胞の存在を見出した。GM-CSFによるRALDH2発現誘導の際、特に未熟DCではRA受容体からの刺激が必須であり、RA自体が必須補助因子として機能する可能性を見出した。実際、ビタミンA欠損マウスにおいては、MLN-DC中のRALDH2発現が著しく低下していた。腸での免疫反応で発現誘導されうるIL-4とIL-13にもRALDH2発現誘導活性が認められたが、受容体欠損マウスの解析から必須因子ではないことが判明した。腸内細菌などがもたらすToll様受容体からの刺激も、未成熟DCにおいては成熟化とGM-CSF依存性RALDH2発現の促進効果を示した。脾臓DCにはRALDH2はほとんど発現していなかったが、GM-CSFとIL-4を組合せて刺激することによってRALDH2発現を誘導した上で、TGF-βを加えてナイーブCD4^+T細胞に抗原提示させると、Foxp3^+制御性T細胞を効率良く分化誘導できることが判明した。
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