研究概要 |
B細胞は様々な外来抗原に対して特異的抗体を産生し生体防御に貢献する。プレB細胞受容体からのシグナルはB細胞分化に必須であるが、下流の標的遺伝子群およびそれらの機能については未解決である。RAG2欠損B前駆細胞の分化誘導モデル系を用いた遺伝子発現解析から、Btk依存的に制御される転写因子HeyL及びMafBを同定した。これらのB細胞初期分化における役割やB細胞レパトア形成における役割について検討した。前年度までにHeyL過剰発現によりB細胞系への分化やB細胞産生が亢進することを示した。本年度は、HeyLが持つDNA結合bHLHドメイン、Orangeドメイン、C末端部位の欠損変異体を作製し、機能ドメインを同定した。DNA結合bHLHドメインはB細胞分化及び増殖のどちらにも必須であること、C末端部位の欠損は増殖誘導を障害しむしろ分化を促進することがわかった。HeyL遺伝子のエクソンをGFP遺伝子に置き換えたターゲティングベクターを作成し、常法によりキメラマウスを得てHeyL欠損マウスを作成した。HeyL発現をGFPでモニターすることを試みるとともに、HeyL欠損マウスにおけるB細胞分化、液性免疫応答の解析を始めた。MafB遺伝子をGFPと置き換えた遺伝子改変マウス(Takahashi S et al. MCB, 2006)を入手した。このマウスは新生児期に無呼吸により死亡する。胎児肝よりプロB細胞株を樹立し、MafB欠損によるB細胞分化への影響を解析した。MafBはプロB細胞の一部に比較的強く発現し、その欠損で増殖が亢進する可能性が示された。
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