研究の最終年度にあたる22年度は、研究計画に沿って以下の成果を得ることができた。 (3)基幹脳活性を抑制する作用をもつ周波数帯域の検討 自然性の高い熱帯雨林には200kHzに達する高周波成分が含まれているとはいえ、超高周波帯域の中にはマイナスの影響を及ぼす帯域が含まれていないかどうかについては確認を要する。そこで、基幹脳活性を抑制する可能性のある周波数帯域があるかどうかを検討した。このために、初年度に開発した実験用音源および超高周波再生システムを用いて、ローパスフィルタによって抽出した遮断周波数以下の低域成分だけを呈示した場合と、そこにバンドパスフィルタによって抽出した帯域制限した超高周波成分を共に呈示した場合とで、基幹脳の活性を反映すると考えられる頭頂後頭部の脳波α2成分に違いが生じるかどうかを検討した。同様の実験を、異なる数種類の帯域周波数を設定して行った。その結果、基幹脳活性を抑制する傾向を示す周波数帯域が存在することが見出された。 (4)人工高周波成分の効果に関する検討 これまでの研究では、自然性の高い環境に存在する超高周波成分を極力忠実に収録し、これを実験用音源として実験に用いてきた。一方、現代都市の環境音には、ホワイトノイズやピンクノイズ状の超高周波ノイズや、インバーターや電子機器に由来するピークをもった超高周波ノイズなどが存在している。周波数構造が自然の動植物由来のものとは大いに異なるそうした人工高周波が、人間にどのような影響を及ぼすかについて検討するため、天然の超高周波成分を電子的に合成した人工超高周波成分に置きかえて被験者に呈示する実験を行った。その結果、天然の超高周波成分で導かれた基幹脳活性化効果が、人工超高周波成分に置き換えた場合には十分に発現しないことが示された。
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