光情報は、光受容細胞によって電気信号に変換され、網膜介在ニューロンにより処理されて光強度の増加や減少、色、物体の動きなどの視覚特性に分解されたのち、それぞれ異なる網膜神経節細胞のサブタイプにより脳へと送られる。また、同一のサブタイプの細胞は、お互いに一定以上の距離を保ち、網膜上に規則正しく配置しており、regular mosaicと呼ばれる分布様式をとる。しかしながら、それぞれのサブタイプを簡便に判別する方法がこれまでになかったため、網膜神経節細胞サブタイプ決定機構およびregular mosaic形成機構は、ほとんど分かっていないのが現状である。申請者らは世界に先駆けて、サブタイプ特異的に発現する分子SPIG1を発見し、さらにSPIG1-EGFPノックインマウスの副視覚系内側核を逆行性トレーサーでラベルすることにより、2種類のサブタイプを可視化することに成功した。本研究は、この成果を発展させ、網膜神経節細胞サブタイプ決定機構およびregular mosaic形成機構を解明することを目的とする。本年度は、この2種類のサブタイプが、上向きと下向きの光の動きに反応することを電気生理学的に証明した。また、この2種類のサブタイプは共に副視覚系内側核へ投射するが、その経路が異なっていることも明らかにした。
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