研究概要 |
本研究は, 近年開発された個別化合物安定同位体比質量分析計(GC/C/IRMS)を利用することで, 農薬を構成している炭素及び水素安定同位体比を測定し, 国内産, 海外産や商品ごとの識別を目指すことを目的とする。平成20年度は期間が4ヶ月と短く, 装置の選定, 試料の収集, 文献等の資料の収集・精査に多くの時間を割いた。また分析に関しては, 前処理(デュアルインレット, 元素分析計)の異なった方法による水素安定同位体比の精度, 確度の違いを調べ, 来年度以降に高精度の農薬類の測定を行うための準備を行った。装置は, 本学所有の安定同位体比質量分析計の改造を目指したが, 費用が予想以上に高額であることがわかり断念し, 今後の改造のし易さからアイソプライム社の安定同位体比質量分析計を購入することになった。また農薬試料に関しては, 昨今の冷凍餃子のメタミドホス問題の解決を目指し, メタミドホスの標準試薬を現在, 国内で集められるものをすべて収集した。また中国製のメタミドホス製品は東京農業大学(千葉大学名誉教授)の本山直樹教授より頂くことが出来た(現在, 測定中)。また文献調査では, メタミドホス問題だけでなく, 現在, 国内で食品に残留しているため監視項目となっている農薬類等について精査し, 対象農薬を選定した。また分析では, 水素安定同位体比を測定項目とする場合, 精度の高い分析を行う必要があるため, ディアルインレットを用いた方法と元素分析計を用いた方法との比較検討を行った。両者の誤差は数‰程度と非常に低く, 高精度での測定が可能であることがわかった。水素は非常に安定性が悪く精度の高い分析は難しいと考えられているが, 本学では高い分析精度で測定が可能であることがわかった。
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