研究概要 |
本研究は,近年開発された個別化合物安定同位体比質量分析計(GC/C/IRMS)を利用することで,農薬を構成している炭素及び水素安定同位体比を測定し,国内産か海外産,また商品ごとの識別を目指すことを目的としている。平成20年度は分析の前段階であるリファレンスガス中の炭素及び水素安定同位体比のデュアルインレット及び元素分析計を用いた測定精度の検討を行なった。平成21年度は同位体比質量分析計とガスクロマトグラフを融合させ,また液体窒素を用いたクライオフォーカスシステムを導入し,実際の農薬類中の炭素安定同位体比の測定を行った。農薬類は秋田県内でよく使用されている有機リン系及びカーバメート系などの農薬類9種(ピリダフェンチオン,ピリブチカルブ,フサライドなど),また近年中国産冷凍餃子問題でも話題になったメタミドホスを対象農薬とした。 その結果,ガスクロマトグラフにおいて様々な分析条件検討を行い,農薬類9種において,分析精度は(バルク測定である元素分析計と比較して)1‰以下と高い精度であった。一般的な農薬類のガスクロマトグラフを用いた分析方法を確立することが出来た。しかし,昨年度入手した中国製のメタミドホス製品及びメタミドホス標準物質の測定は困難を極めた。メタミドホスは,他の農薬以上に分析条件(GCにおけるキャピラリーカラムの選定,注入口の選定など)が精度及び確度に大きく影響を与えることがわかった。その理由として,メタミドホスは極性が強く安定性に欠けることがその理由だと推察された。今後はクライオフォーカスの条件検討などを行っていきたい。
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