研究概要 |
商用電源周波数をもつ変動電磁場が免疫細胞の免疫能ならびに遺伝子に与える影響を評価するシステムを確立し、電磁場と細胞の相互作用メカニズムを解明する。 変動電磁場の免疫能への影響には酸化ストレスの存在が示唆されている。そこで細胞が産生する一酸化窒素(NO)をNOによる、蛍光物質DAF-2の蛍光増強を利用して測定することにより影響の定量化を行った。当初マクロファージ様細胞(J774.1)を用いて測定を試みたがこの細胞が反応しなかったため、細胞をHuman umbilical Vein Epithilial Cell (HUVEC)に変更して実験を継続した。その結果、変動磁場(1mT, 50Hz)をヘルムホルツコイル中心付近において1時間曝露した細胞群ではNO産生は非曝露群に対して統計的に有意にNO産生が変化した。この変化はコイルに流れる電流による発熱のためでないことは、非曝露群においては曝露群と温度が同じになるようにしたため、コイルの発熱の影響は除外できる。興味深いことに、非曝露群に対して曝露群の産生が増加する場合と減少する場合がみられた。通常このような実験では変化はいずれかの方向に傾くと考えられがちであるが、我々の結果はそうではないことを示している。現在その原因については検討中だが、作業仮説として細胞増殖周期と得られる結果との相関を考えており、それを検証する実験を平成22年度に行う予定である。これらの結果は、NO産生系(HWECの場合にはeNOSを中心とした反応系)に電磁場が影響する可能性、NOのNO2-イオンなどへの転換に電磁場が影響する可能性などを示しており、今後検討を進める予定である。
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