生体の磁場応答機構を細胞レベルで探るため、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)に50Hz、1ミリテスラの変動磁場をヘルムホルツコイルで1時間印加し、HUVECが産生する一酸化窒素(NO)濃度をNO感受性色素DAF-2を用いて測定した。その結果曝露群においては非曝露群と比較してNO濃度が高まる場合と下がる場合のあることが明らかとなった。 このような特異な結果が温度や振動などの交絡因子の影響である可能性を検討した。磁場印加中の細胞付近の温度と振動を測定した。温度は測定精度0.1℃のプローブ式温度計により測定し、一方振動は圧電型検出器により測定した。その結果、非曝露条件と曝露条件で温度、振動ともに差は見られず、両条件下でのNO産生の違いは温度や振動によるものではないことが分かり、上述の特異な結果はUVECのNO産生機構と低周波磁場の何らかの相互作用に依存することが初めて示された。これまでNO産生への磁場影響を細胞で調べた例は少ない。しかも影響が一方向に出ないことは新規な結果である。 この成果に加え、蛍光プローブDAFの自発的蛍光強度増加という、これまで報告されてこなかった現象を見出した。これは実験結果の解釈に大きく影響する。我々は測定におけるランダム化によって影響が最小限となることを見出した。
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