本年度は、ゲーティング固体ナノポア構造の作製プロセスの確立と、溶液中を流れるナノ粒子を電気的に検出する計測法の確立を目的とした。ゲーティング固体ナノポア構造は、Si_3N_4/Si/Si_3N_4基板上に、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー、リフトオフプロセス、およびエッチングを組み合わせた12ステップの微細加工プロセスを行うことで、直径10nmのナノポアまで作製することに成功した。さらに、ゲーティング固体ナノポア構造にPDMSを用いたマイクロ流路を組み合わせ、これに圧力による溶液フローシステム組み入れることで、溶液中の物質をダイナミックに測定するデバイス構造を作製した。 一方、ナノ電極間の溶液中を流れる物質の電気計測法とその電気シグナルの起源は、これまで報告例がない。そこで、数ナノメートル以下の電極間距離を制御可能な機械的破断接合法とマイクロ流路を組み合わせたデバイス構造を作製し、水中を流れる直径2nmの金ナノ粒子の電気検出を試みた。溶液のフローには、マイクロ流路内に対電極を作製し、電気泳動を用いた。電極間距離を2nmに固定して、定電圧下における電極間電流をログアンプにより測定したところ、水のみの場合は特徴的な電気シグナルは得られなかったが、金ナノ粒子を含む溶液を流した場合は、スパイク状の電気シグナルが得られた。得られた電気シグナルのピーク電流値とシグナルの減衰時間を解析したところ、得られた電気シグナルは電極-金ナノ粒子-電極に流れるトンネル電流であることが示唆された。
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