研究概要 |
平成21年9月に磁場発生装置が納品され,実験装置の検証運転と測定装置の組み立てを行った後に,マイクロ流路内の赤血球の測定を開始した.測定系としてマイクロ電極を用いた電気的測定と高速度デジタルビデオカメラを用いた可視化測定装置を完成させた.前者のマイクロ流路とマイクロ電極から構成されるマイクロセンサでは,測定のS/N比向上を目的として細胞を含めた流路内の電極周りの電場について3次元数値解析を行い,流路と電極寸法,細胞の特性と形状が測定抵抗値に与える影響を明らかにした.解析結果からセンサの最適形状を求め,このセンサを用いてヒト赤血球について単一赤血球の電気特性と変形能特性の測定を行った.一方,可視化ではマイクロ流路内に懸濁した赤血球の磁気トルクによる配向現象などを測定し,磁場強度との関係を定量的に明らかにした.現在は,マイクロ流路内の流動場への影響の検討と,流体力との釣り合いによる異方磁化率の測定を開始している. 数値シミュレーションでは,ばねネットワークモデルと有限要素法をそれぞれ用いた赤血球モデル,さらに境界埋込法を用いた流体との連成解析手法を導入した計算コードを完成させた.これらの赤血球モデルに赤血球全体の異方磁化率や細胞膜を構成するタンパク質等の各要素の異方磁化率を考慮した2種類の磁気トルクモデルの開発も行った.計算では,一様磁場中の赤血球の配向現象が求められ,上記の実験結果と定性的に一致した.今後は,実験と並行して計算を行うことで定量的な評価を行うとともに,他機関の研究協力者と連絡を取りながら,モデル開発を完成させる予定である.
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