研究概要 |
生細胞は生命活動のために外界から様々な元素を取り込んだり放出したりしているが、極性や電荷をもった元素が生体膜を介して細胞に出入りするには、生体膜輸送を担う何らかの膜輸送体が必要である。本研究は、モデル植物シロイヌナズナの膜輸送体遺伝子を総当たり式に過剰発現させ、その結果引き起こる、細胞内の元素量変化や関連する表現型を調べることを目的とした。 発現解析の基盤となる膜輸送体遺伝子のクローニングは技術的に困難な面が多く、予想以上の時間を費やしたが、最終的にシロイヌナズナゲノムにある1,404遺伝子のうち1,380遺伝子(98%)をクローニングした。本研究で作出したライブラリは今後の植物膜輸送研究を進める上で貴重な資産として、活用・公開してゆきたい。一方、試験的に作出した遺伝子過剰発現ライブラリを用いて、元素レベルを変化させうる膜輸送体群を予備的に検討した。具体的には、(1)酵母発現株ライブラリを用いた新規亜鉛輸送体の探索、(2)動物細胞発現株の総当たり解析によるモリブデン膜輸送体の探索、(3)シロイヌナズナ過剰発現株の重金属耐性試験による、マンガン、ニッケル、カドミウム膜輸送体の探索、を入り口として、各元素輸送体候補分子の解析を進めた。以上の中間成果について1件の論文発表、6件の学会発表を行った。また、研究遂行過程の発明1件を特許出願した。
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