本研究は、クロマチンを制御して遺伝子発現を調節できるDNA構造(非B型DNA構造:クロマチンモジュレーターと称す)を利用することにより、高効率・安定化した遺伝子発現強化機能を付与した「クロマチン改変動物」を創出することを目的とする。本年度は以下の研究を行った。 (1) Pol II型転写活性モデルの作製 哺乳動物培養細胞(HeLa cell)において、RNAポリメラーゼII型転写活性促進機能を発揮することを明らかにしている人工ベントDNA配列(T20配列)(両端にloxP配列を付加)をβ-actinプロモーター/EGFP発現ユニットの上流に配置した発現ベクターを作製し、ES細胞に導入した。シングルコピー導入ES細胞を選別し(T20/GFP株)、さらにCreリコンビナーゼによりT20配列を除去したES細胞(△T20/GFP株)を作製した。当該ES細胞についてフローサイトメトリー解析を行った結果、T20/GFP株でGFPの発現が安定して高い傾向が示された。さらに、T20/GFP株を用いて、キメラマウスを作製した。 (2) Pol III型転写活性モデルの作製 RNAポリメラーゼIII型転写活性におけるクロマチンモジュレーター機能の解析を目的として、shRNA発現トランスジェニックマウスによるノックダウンマウスの作製と解析を進めている。本年度は、これまでに報告したSOD1ノックダウンマウスのモデルを利用し、人工ベントDNA配列(T20配列)(両端にloxP配列を付加)をhU6プロモーター/SOD1-shRNA発現ユニットの上流に配置した発現ベクターを作製し、ES細胞に導入した。シングルコピー導入ES細胞を選別し(T20/SOD1-shRNA株)、さらにCreリコンビナーゼによりT20配列を除去したES細胞(△T20/SOD1shRNA株)を作製した。
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