研究概要 |
本研究の目的は,タンパク質の構造構築理論と試験管内進化を組み合わせ,抗体の機能をダウンサイジングすることである。すなわち,抗体タンパク質とは全く異なる構造モチーフをもつ人工マイクロ抗体の分子ライブラリーを構築し,免疫システムにおける抗体の多様性と選別の機能を試験管内で再構築して,抗体に代わる分子ブローブや分子標的医薬の開発を行う。本研究で提案する特定の標的抗原に対して特異的に結合するペプチドを「マイクロ抗体」と名付けた。マイクロ抗体は3つの領域で構成される[(1)N末端ヘリックス(14アミノ酸残基からなる構造支持領域),(2)ループ(グリシン7残基からなるリンカー),(3)C末端ヘリックス(14アミノ酸残基からなるライブラリー領域)]。これまでに,ファージ表層提示法によって,C末端ヘリックス外側のアミノ酸をランダム変異したマイクロ抗体のライブラリーを構築し,マウス顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体に対してスクリーニングしたところ,受容体結合性のマイクロ抗体が得られている。そこで,本年度は,まず,G-CSF受容体結合性マイクロ抗体を用いて,マイクロ抗体としての潜在能力を評価した。すなわち,G-CSF受容体結合性マイクロ抗体を用いて細胞膜透過性を検討したところ,マイクロ抗体は膜透過性を有することが判明した。また,ループ部をランダム化したライブラリーを構築し,オーロラキナーゼAに対してスクリーニングを行い,オーロラキナーゼ結合性マイクロ抗体を獲得することに成功した。
|