近年の血栓性疾患発症の増加傾向から、その治療ならびに予防は重要である。本研究では、微生物二次代謝産物から発見した血栓溶解促進物質マルホルミンの細胞内分子標的をケミカルバイオロジーアプローチによって明らかとし、また構造活性相関研究からマルホルミンをファーマコアとした新規血栓溶解剤の応用を目指す。さらに、同定した分子標的をターゲットとする新たな低分子化合物の探索を行なう。以上の研究により、新しい作用機序を有した血栓溶解剤開発の分子基盤を創製する。平成20年度は、in vitro線溶活性評価系を用いた天然型及び還元型マルホルミンの構造活性相関を行なうために、マルホルミン生産菌であるAspergillus niger F7586株を培養し、マルホルミンA1を含む天然型マルホルミン類の単離・精製を行なった。現在、マルホルミンA1の分子内ジスルフィド結合を還元アルキル化した還元マルホルミンの作製を進めている。また、マルホルミンをリード化合物とした非天然型マルホルミン誘導体のin vitro線溶活性評価を行うため、2つの方法((1) 固相担体に順次アミノ酸を導入して直鎖状ペプチドを調整後、ジスルフィド結合を形成させ、担体からの脱離、最後に還化する方法。(2) システインのスルフヒドリル基に固相担体を導入し、順次アミノ酸を導入して直鎖状ペプチドを調整後、還化し、最後に、担体からの脱離とジスルフィド結合の形成を同時に行う方法。)で誘導体合成の条件検討を行っている。
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