近年の血栓性疾患発症の増加傾向から、その治療ならびに予防は重要である。本研究では、微生物二次代謝産物から発見した血栓溶解促進物質マルホルミンの細胞内分子標的をケミカルバイオロジーアプローチによって明らかとし、また構造活性相関研究からマルホルミンをファーマコアとした新規血栓溶解剤の応用を目指す。さらに、同定した分子標的をターゲットとする新たな低分子化合物の探索を行なう。以上の研究により、新しい作用機序を有した血栓溶解剤開発の分子基盤を創製する。 平成21年度は、in vitro線溶活性評価系を用いた天然型及び還元型マルホルミンの構造活性相関を行なうために、マルホルミン生産菌であるAspergillus niger F7586株を培養し、天然型マルポルミンA1、A2、A3(B1b、C)、A4、B4を単離・精製した。また、マルホルミンAlの分子内ジスルフィド結合を還元した還元マルホルミンA1、さらにアルキル化した還元アルキル型マルホルミンA1を固相化法によって合成した。マルホルミン合成に先立ち、マルホルミンの部分構造体であるジスルフィドD-システイニル-D-システインを作成し、in vitro線溶活性評価系で活性評価したところ、活性は認められなかったことから、活性発現にはタイトな環状構造が必須であることがわかった。今後、天然型及び還元型マルホルミンの構造活性相関を進め、側鎖のアミノ酸やジスルフィド結合の重要性を調べる。また、マルホルミンの分子標的を同定するための、蛍光標識マルホルミンや光アフィニティータグ/ビオチン標識マルホルミンの作成も進めている。
|