研究概要 |
本研究の狙いは,統合失調症や高次脳機能障害という病名が与えられた人々(the Communication Handicapped; CH)が社会から分離されることなく,地域の人々と自然な交流のできる社会の実現にある.その足掛かりとして,本課題では,会話の成員が個々に持つ社会的・個人的属性や会話の個々の構成物(発話や身振り)の相互作用が作り出すコミュニケーションシステムにおいて,コミュニケーションギャップが検出され,排除/吸収されていく過程のメカニズムを解明する. 前年度は,関東圏4施設において統制条件会話(参与者の病名・重症度・会話対タイプ・会話時間を恒常化した会話)計50組の会話データの前発話の書き起こしを作成し,またその内の16組については視線方向に関する映像アノテーションを行った.そして,それらのデータを用いて以下の分析を行った. (1)会話中で繰り返される<逸脱>時に共通してとられる会話方略の解明(榎本・串田) (2)<逸脱>発言に付随するメタメッセージの理解と産出の機構を解明(岡本・榎本・高梨)(3)参与者が自他のルールを対象化しうるメタ認知機構を解明(松嶋・岡本・高梨) (4)上記で得られた知見をもとにCHと周囲の人々に双方のすれ違いに「気づき」をもたらす会話実践(山川・松岡・小谷) (5)イタリアにおけるCHの地域生活の調査(榎本・岡本・松嶋・山川)
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