研究概要 |
デジタル解析学に関する本年度の研究成果は以下のとおりである. 研究代表者の山田は生態系や反応拡散系に現れるいくつかの微分方程式モデルについて解の漸近挙動や大域解の存在を詳細に調べた.連続系の方程式に関するこれらの解析学的成果について, デジタル化するための可能性について主に数値計算の観点から検討を行った. 分担者の柏木は精度保証付き数値計算法に関して, コンピュータへの実装を考慮した新たな数値計算手法の開発を行った.主な手法は, 二重指数公式や複素解析を用いた高速精度保証付き自動積分法, および, affine arithmeticやpower series arithmeticを用いた初期値問題の解法である. 分担者の高橋は, 超離散化手法を中心にデジタルモデルと連続モデルとの関連について解析を行った.まず, 微分方程式を用いた交通流モデルとして著名な最適速度モデルのデジタル化に成功し, 得られたセルオートマトンモデルの有効性を検証した.さらに, ソリトン方程式について可積分性を保ったままのデジタル化を行い, 解の数理構造について詳細に調査した. 分担者の松嶋は, 主に情報理論におけるデジタルアルゴリズムの理論解析と応用を行った.主要な成果として, 複数のLDPC符号の交錯による有限状態マルコフ通信路に適した誤り訂正符号の構成法, 外れ値データの発生を含む回帰モデルに対するベイズ予測アルゴリズム, 拡張された有本-Blahutアルゴリズムの大域的収束性などについて, それぞれアルゴリズムの理論的限界や有効性について検討を加えた.
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