土星の衛星探査機カッシーニが衛星タイタン上空の大気成分を質量分析したところ、正イオンとしては窒素、メタン、ベンゼンなどm/z=350までの分子が観測され、負イオンとしては分子量がm/z=8000までの高分子が観測された。本研究では、タイタンの大気条件(組成、温度、圧力など)を移動管内で再現し、正/負イオンによる高分子化現象を解析する。この結果を用いて、タイタンソリン(靄)を形成する生成過程を明らかにする。 今年度は以下の様な、新規な低温移動管質量分析装置を作製し、性能評価を行った。 1) 低温移動管分析装置の作製 新規な移動管分析装置の設計、製作を行った。低温のコールドヘッドに移動管を取り付け、移動管の温度を20Kまで低温にすることが可能となった。移動管に打ち込むイオン強度を増加させるための新規なレンズ系を考案、作製し、論文、学会発表を行った。 2) 移動管と四重極質量分析計の結合 低温移動管に四重極質量分析計を取り付け、特定のイオンのみの分析を可能とする装置の改良を行った。移動度の測定は移動管内の正確な滞在時間から求められる。異なる質量のイオンでも滞在時間が同じであれば、移動度の測定が困難となる。このため、選択したイオンのみが分析できる四重極質量分析計を購入し、設置準備をした。 3) 移動度の測定 Ar^+の移動度を測定した結果、過去の報告値を一致したため、移動管の性能が検証された。メタンの化学イオン化法により生成した種々イオンについても移動度を測定した。いずれのイオンについても室温と低温領域の測定を行った。
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