研究概要 |
二酸化炭素の炭素-酸素二重結合やメタンのC-H結合を二つの金属の協同作用により活性化することが可能な新規異種二核金属錯体としてピンサー型二核金属錯体の設計・合成を試みた。すでに合成に成功しているシリルピンサー型パラジウム錯体を基盤とし、そのニッケル、白金錯体の合成を試みた。その結果、ビス(o-(ジフェニルホスフイノ)フェニル)シランに対し、等モル量のNi(PPh_3)_4をTHF溶媒中室温で作用させたところ、シラン配位構造を持つ0価ニッケル錯体が得られることを見いだした。^<29>Si NMRにおけるケイ素-水素原子間の結合定数(J_<siH>)のが大きいこと(89Hz at 300K, 77Hz at 193K)、ならびにTHF-Et_2Oから得られた単結晶によるX線構造解析から、本錯体は溶液、固体いずれの状態においてもシラン配位構造をとっていることがわかった。このような単核0価のシラン配位ニッケル錯体の合成例はこれまでになく、新規錯体としてその構造、反応性に大きな興味が持たれる。そこでその反応性について検討した結果、溶液中加熱条件下でシリルピンサー型ニッケルヒドリド錯体の等価体として機能し、アルケンの異性化反応を起こすことがわかった。興味深いことに、その触媒活性は対応するパラジウム錯体よりも高いこともわかった。一方、同じ10族金属錯体であるPt(PPh_3)_4との反応を室温で10時間行ったところ、ケイ素-水素結合の酸化的付加が進行した5配位シリルピンサー型白金ヒドリド錯体が得られた。
|