面不斉フェロセニルホスフィンppfaなどの不斉配位子に代表されるように、「面不斉」を有する化合物は効果的な不斉テンプレートであり、有用な不斉触媒・不斉試薬となることが知られている。このような面不斉化合物の有用性にもかかわらずその触媒的不斉合成の成功例は非常に少なく、未開拓な分野として残されている。この様な現状をふまえ本研究では、(1)面不斉メタロセン錯体の触媒的不斉合成法の開発、(2)開発した反応により得られる面不斉メタロセン類の応用、の2つを目的とする。一つめの成果として面不斉ホスファフェロセンの不斉合成がある。キラルなSchrock型モリブデン・カルベン錯体を用いた不斉閉環メタセシス反応により、プロキラルなホスファフェロセン基質の非対称化により、最高99% eeという非常に高い選択性で面不斉ホスファフェロセンの触媒的不斉合成に成功した。ここで得られる面不斉生成物はルイス塩基性を有しており、不斉配位子としての応用が可能である。また前年までに、「ラセミ体の速度論分割」により触媒的に光学活性面不斉フェロセンを得る手法を開発しているが、この手法をメタロセニルボスフィン誘導体へと応用し、面不斉ボスフィン類を90% eeを越える高いエナンチオ選択性で得ることに成功した。ここで得られた面不斉メタロセニルホスフィン類もまた不斉配位子として応用可能であり、パラジウム触媒不斉ヒドロシリル化反応において中程度のエナンチオ選択性を示すことを見出した。
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