本研究について2つに大別して記載する。一つは、絶縁体固体表面原子構造解析に関する研究である。現在においても表面科学分野において絶縁体表面原子構造を知ることは困難な課題である。理由は従来利用できていた電子線、イオンビームのプローブビームが利用できないからである。その理由は、固体表面に電荷が蓄積し、入射ビームがもつ電荷と反発するからである。そこで電気的に中性なビームを利用できるように工夫を行った。さらには100kHzのパルス化ビームとした。計測機器は自作を行い、これらを改良し電気的に安定して働くよう工夫を行った。実際には後方散乱された粒子の飛行時間を計測することで測定を行っている。計測機器の時間分解能は、10nsecで4ch同時測定できる機能を要している。本装置は、磁場中に設置した試料からの信号も計測できるようになっている。 次に細胞生理学への応用について述べる。小型加速器で生成されたMeV領域のイオンビームを生体細胞へ照射する研究を行っている。例えば2MeV-H^+ビームを真空外へ直接取り出し、溶液中ないに存在させている生体細胞へ照射し、浸透への影響、DNAとの相互関係を調べている。~10^11 atoms/cm^2の照射で細胞の働きに顕著な影響が出ていることがわかった。線エネルギー付与と細胞への照射効果の関連性について解析を行っている。この研究では、AFM装置を利用し細胞の形状観察も行っている。上記で述べた研究は、いずれも新しい分野の研究である。今後さらなる研究を進めていく。
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