研究概要 |
本研究は,コウモリが音で"見る"高度な仕組みを解明し,次世代のナビゲーションシステムやロボット工学への応用を指向する,新しいバイオミメティック制御原理の創出を目的としている.当該研究課題に関しては,平成20年度に計画していた実験環境の整備に必要な細胞外記録用アンプの納入が年度内に間に合わず,該当機器購入のため研究費の一部に関して繰越申請を行なった.以下はその内容に関する実績報告である. 1. 細胞外記録用アンプを導入し,コウモリに対する生理実験に必要な実験環境の整備を行なった.アブラコウモリを実験対象種とし,専用の脳固定装置を試作した.その後,先行研究として知見が豊富な下丘部位に対して,古典的手法による音刺激に対する神経活動の記録を無麻酔下で行なった.これらの予備実験を通じて,新規実験環境の構築並びに,体重が5g程度と小型であるアブラコウモリに対する生理実験の技術習得を図った.2. 生理実験の対象として選んだアブラコウモリに関して,光に対する視覚感度を確認するため,弁別行動実験を行なった.各種波長や強さの異なる光を提示し,その光の有無に対するコウモリの反応をY迷路を用いて調べた.その結果,特に500-600nm付近の光に対しては,光の有無に対する弁別能力があることを確認した.またこれにより,Y迷路を用いた動物へのトレーニング技術を習得し,またアブラコウモリに弁別実験に関する適正があることを確認することができた. 今後は,生理実験に関してテレメトリへの展開を目指した技術課題の列挙や,装置の改良を行なう.
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