1) LETM1蛋白質の構造解析 クリステ構造の形成・維持に重要であるとして私達が見出したLETM1は、幾つかの構造的に特徴のあるドメイン(EFハンド、ロイシンジッパー、LETMホモロジードメイン)を有している。このドメインの役割を解析するため、それぞれを欠損したヒトLETM1変異体を作成後、酵母のLETMI相同遺伝子MDM38の欠損株に導入し、非発酵性炭素源のみに培地での生育を指標に相補能を解析した。その結果、ロイシンジッパーとLETMホモロジードメインが相補能にとって不可欠であり、EFハンドは必要ないことが明らかとなった。 免疫電子顕微鏡の解析により、ヒトLETM1のHeLa細胞での過剰発現はクリステ膜同士が部分的に張り付き、ハニカム構造を作ることが判った。今後は、LETM1変異体を用いた同様の実験により、動物細胞でもロイシンジッパーやLETMホモロジードメインが必要なのかを検討する。 2) 折りたたみ膜構造の再構築 カイコで発現したLETM1を精製後、人工リポソームに埋め込み折り畳み膜構造を再構成する際に、これまでは電子顕微鏡を用いたネガティブ染色法を検討してきた。しかし、ネガティブ染色法では100nm程度の小さなリポソームしか観察できず、物理的に膜の折り曲げを観察するのに不利だった。そこで、急速凍結置換法により電子顕微鏡解析を試みた。その際、有機溶媒処理によりリボソーム消失を防ぐため、BSAやリゾチームなどの蛋白質を緩衝剤として溶液に加え実験を行った。現在、リゾチームを加えたサンプルで明らかな膜の陥入をもつリボソームを観察している。今後は、連続切片法などによりより詳細な構造を解析する。
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