本研究では、植物の生存戦略としての「葉の老化時に起こる葉緑体タンパク質の分解」の分子機構と生理的意義について明らかにすることを目的に、第一にRCB経路による葉緑体タンパク質の分解の基本メカニズムの解明を目指す。RCB経路に関わる分子機構を明らかにする最も有効な手段は、RCB形成にかかわる変異体を系統的に単離し、原因遺伝子について解析していくことであると考えられた。その第一段階として、本年度はRCBが、液胞の分解活性を抑制する阻害剤、コンカナマイシンAの存在下でも液胞に蓄積しない変異体の単離を検討した。初めにスクリーニング系について検討した。葉緑体移行GFPを発現する形質転換体の種子をEMSで処理し、化学的突然変異を誘起させた。次世代(M2)の種子をMS培地下、暗所で5日間置いて得られる芽生えの胚軸を材料とし、RCBの可視化が出来るか検討した。その結果、シュクロースを含まないMS培地にコンカナマイシンAを加え暗所で2日間置くと胚軸の細胞においてもRCBが形成されることがわかった。また蛍光顕微鏡下でスクリーニングされた変異体を明所に戻し、植物体の再生・次世代種子の獲得ができる条件についても検討し、RCBに関わる変異体の効率的な選抜が十分に可能であることを確認した。またオートファジー能欠損(atg)変異体において早期老化、細胞死が誘導される要因について解析するため、atg変異体と細胞死に関わる遺伝子群の変異体やstay-green変異体を交配し多重変異体を得、今後遺伝学的な解析を行う基盤を整備した。
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