研究概要 |
(1) 生物由来のMS/MSデータを用いたネットワークモジュールによる代謝物の高度アノテーション 昨年度データを収集したフラボノイドを中心とする既知化合物精製標品のMS/MSデータ(113個)を用いて、コサイン相関係数を指標として計算し、別途独自に開発したネットワーク解析手法(金平糖解析、OgataY et al, 2009 Genome Inform. 23 (1), 117-27)で、ネットワークモジュールの抽出を行い、それを描画で表した。得られた各モジュールに関して、MS/MS情報から化合物の部分的な構造推定(アノテーション)を行った。次に、KOMICS (http://webs2.kazusa.or.jp/komics/, lijima et al., 2008 Plant J 54:949-962)よりトマトの代謝物(約850)のMS/MSデータを用いて、同様なネットワーク解析を行った。さらに、ミヤコグサ(約100個)のMS/MSデータ(Suzuki, 2008 Phytochemistry, 69, 99-111)も追加解析を行った。質量数317.1のフラボノイド由来の骨格モジュールが様々な種を越えて(ヘテロな関係)、保存されていることが明らかになり、ヒューリスティックス(Heuristic)な解析へめ第一歩のモジュールアノテーション手法の確立に成功した。今後、様々な種類の代謝物のMS/MSデータについて追加解析を行う予定である。また、コサイン相関解析だけではなく、相互相関解析やフーリエ変換も取り入れる予定である。 (2) 酸化反応を調べるための^<18>O_2存在下での植物育成 昨年度システムを開発した同位体元素の持続的な投与が可能な光合成生物の育成装置を用いて、ミヤコグサを約一カ月程度、同位体酸素^<18>O_2,存在下及び非存在下(コントロール)で育成し、代謝物への同位体酸素原子取り込みを実測する実験系を確立した。その結果、ミヤコグサ代謝物の多くに同位体酸素が取り込まれたことが、液体クロマトグラフィー/フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴/質量分析装置(LC/FTICR/MS)を用いて確認された。現在、全代謝産物に対する同位体酸素取り込み代謝産物の割合を解析する予定であり、他の光合成能力を有する植物・シアノバクテリア・クラミドモナス・ヒメツリガネゴケを用いて、同様な取り込み実験を行い、代謝物の多様性に関して、議論する予定ある。
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