研究課題
クロロフィル生合成系において化学的に安定なポルフィリン環を還元する酵素プロトクロロフィリド還元酵素には、構造的に関連性のない2つの酵素が存在する。1つは、NAD(P)(H)に依存して多様な酸化還元を行う短鎖アルコールデヒドロゲナーゼファミリーに属する光依存型プロトクロロフィリド還元酵素(Light-dependent protochlorophyllide oxido-reductase ; LPOR)であり、もう一つはニトロゲナーゼと類似した暗所作動型プロトクロロフィリド酵素(Dark-operative protochlorophyllide oxidoreductase ; DPOR)である。このような構造が異なるが同じ反応を触媒するアナロガス酵素の創出が進化的にどのような過程で生じたのかを多面的に検証する。特に、LPORは、植物の暗所芽生えのエチオプラストにおいて半結晶状構造を形成して集積する。このような特異な性質が光依存型反応と関連しているかどうかについて、プロラメラ体を形成しないラン藻細胞においてLPORを大量発現させることで検討をおこなった。ラン藻Leptolyngbya boryanaとE.coliとの間のシャトルベクターpPBH 201を用いて、trcプロモータ制御下にLPOR遺伝子を挿入した発現ベクターを構築し、これをDPOR欠損株YFC2に導入した形質転換体を単離した。この形質転換体YFC2/P202では、LPORの発現レベルがタンパク質量において野生株の約20倍に増加していた。YFC2/P202を暗所で生育させ、その細胞を電子顕微鏡で観察したところ、暗所培養した細胞に限って、これまでに観察されたことのない奇妙な構造体が認められた。この構造体は、植物のプロラメラ体に相当するものである可能性が高く、今後、分光学的な性質について検討を行う予定である。
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