研究課題
クロロフィル生合成系において化学的に安定なポルフィリン環構造を還元し、クロロフィルαの環構造クロリン環に変換するプロトクロロフィリド(Pchlide)還元酵素には、進化的起源が異なる2つの酵素が存在する。一つは、NAD(P)(H)に依存して多様な分子の酸化還元を行う短鎖アルコールデヒドロゲナーゼ(SDR)ファミリーに属する光依存型Pchlide還元酵素(LPOR)と、もう一つはニトロゲナーゼに類似した暗所作動型Pchlide還元酵素(DPOR)である。光依存的な触媒反応は、SDRの中でLPORのみが示すユニークな性質である。光依存型という性質が生じてきた進化の過程とその構造的基盤を検討するため、海洋性ラン藻に着目した。海洋性ラン藻Synechococcus sp. CC9311のゲノムには3つのLPOR様遺伝子(sync_1162,sync_1976,sync_2830)存在する。これらと既知のLPORの分子系統樹を作成すると、sync 1976は既知のLPOR群に、他の2つは他の海洋性ラン藻のホモログとともにより進化的距離が遠い2つの群を形成した。これら2群はLPORの創出を考える上で重要な位置を占めている。そこで、これらの遺伝子産物が光依存型Pchlide還元活性を有するかどうかを検討した。その結果、Sync 1976のみPchlide還元活性を示し、他の2つでは活性が検出されなかった。このことから、これら2つの遺伝子(sync_1162,sync_2830)はLPORが成立する以前に分岐し、何らかの活性をもつ別の酵素へと進化したのかもしれない。これらLPOR様遺伝子に変異を導入してLPOR活性を付与することができれば、光依存型酵素の創出過程を再現することができる可能性がある。
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Nature
巻: 465 ページ: 110-114
Plant and Cell Physiology
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