研究課題
プロトクロロフィリド(Pchlide)還元酵素は、クロロフィル(Chl)生合成系において化学的に安定なポルフィリン環を還元し、Chlaの環構造クロリン環へと変換する。光合成生物には、進化的起源を異にする二つのPchlide還元酵素が存在する。一つは、NAD(P)(H)依存して多様な分子の酸化還元を行う短鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼ(SDR)ファミリーに属する光依存型Pchlide還元酵素(LPOR)であり、もう一つはニトロゲナーゼと類似した暗所作動型Pchlide還元酵素(DPOR)である。広範な酸化還元酵素を包含するSDRファミリーにおいてLPORのみが光依存性というユニークな性質を示す。海洋性ラン藻Synechococcus sp.CC9311のゲノムには、LPORと類似した素をコードする遺伝子が3つ(sync_1162,sync_1967,sync_2830)存在し、既知のLPORを含めた分子系統樹においてSync_1967は既知のLPORに最も近い分岐群に属し、他の2つはさらに遠い分岐群に属していた。昨年度の生化学的解析では、Sync_1967のみLPOR活性を示したが、他の2つは発現が認められず活性の有無を結論するには至らなかった。本年度は、これらのLPOR類似遺伝子群がラン藻Synechocystis sp.PCC6803のLPOR欠損株の強光感受性を相補可能かどうかによって検討した。その結果、Sync_1967を導入した形質転換体のみが強光耐性を示したが、Sync_1162とSync_2830を導入した2株は強光感受性を相補しなかった。Synechococcus sp.CC9311は、Sync_1967のみがLPORとして機能し、他の2つは未知の機能を有していることが示唆される。次に、SDRファミリーとの類似性からLPORのループ部分(Lys131・Pro186)がLPORの光依存性の基盤になっていることが推察される。このループをLEに置き換えた短絡型LPORをLPOR欠損株相補系で検討した。その結果、この短絡型LPORをもつ形質転換体は強光感受性を相補しなかった。このことは、ルーフ構造はLPOR活性に必須であることを示唆している。これらの結果は、今後ループ構造を改変することでLPOR創出の進化を再現するための基盤となる。
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