研究代表者らは、以前の研究でラットの大腿部皮下白色脂肪組織から未分化細胞(ASC)が、培養条件に応じて褐色脂肪細胞様あるいは白色脂肪細胞様の表現型を示す細胞へ分化させる初代培養系を確立している。我々は、同一の細胞が培養条件・培地組成の違いに応じて全く異なる細胞に分化する際に、miRNAによる遺伝子発現制御ネットワークが深く関与しているのではないかという仮説を立て、二通りの分化過程におけるmiRNAの発現プロファイルの変動を網羅的に解析した。その結果、特に、褐色脂肪細胞様に分化する過程で複数のmiRNAの発現が同調して変動することを見出した。また、これらのmiRNAの発現変動は、複数回の独立した実験において再現性が確認されたことから、生体内では本来白色脂肪細胞へ分化するはずのASCが褐色脂肪細胞様に分化する際に極めて重要な役割を担っていると考えられ、現在、詳細な機能を解明する検討を進めている。 また、in vivoでmiRNAをASCへ選択的に送達する技術を開発するため、ラットの大腿部皮下白色脂肪組織から単離したASCをBALB/cマウスに免疫し、脾臓B細胞を分離して、マウスミエローマ細胞(P3U1)との細胞融合を行い、抗体を産生するハイブリドーマを多数作製することに成功した。現在、ASCの表面抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのクローニングを進めており、その有用性を免疫染色法およびFlow cytometryを用いて確認しつつある。
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