研究課題
我々が作製したナルディライジン欠損マウス(NRDc-/-)は、室温下でも低体温を呈し、寒冷暴露下(4℃)での体温恒常性が著しく損なわれていた。体温恒常性は美しくデザインされた調節系の代表であり、本来哺乳動物の体温(核心温)は、外気温によらずほぼ一定に保たれる。寒冷暴露下の適応熱産生(非ふるえ熱産生)の中心と考えられているのは、褐色脂肪組織(BAT)におけるミトコンドリア脱共役タンパク質(UCP-1)によるプロトン勾配の熱への変換である。寒冷刺激は脳で察知され、交感神経活動の亢進を介してBATのβアドレナリン受容体を活性化し、転写コアクチベーターであるPGC-1αの作用を介して、UCP-1の遺伝子発現を誘導する。適応熱産生におけるこの経路の重要性は、上記遺伝子欠損マウスのいずれもが寒冷負荷で体温の低下を認めることからも明らかである。これらの欠損マウスでは一律にBATにおける脂肪蓄積の増加を呈するが、NRDc-/-のBATは脂肪蓄積が減少し、熱産生が亢進していることが示唆された。平成22年度には、NRDc-/-のBATにおいて、室温ではPGC-1α、UCP-1の発現が亢進しているが、低温下でのそれらの発現上昇が認められないこと、一方NRDc-/-において熱放散が亢進していること、を明らかにし,NRDc-/-における体温恒常性の破綻が,適応熱産生および熱放散抑制両者の障害によることを明らかにすることができた。
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