研究課題
タンパク質架橋化酵素(トランスグルタミナーゼ)は、カルシウムイオン依存的に、タンパク質間の接着架橋を触媒し、様々な機能変換を通じて、多彩な生命現象に関与している。本酵素反応においては、8種類のアイソザイム(ヒト)が特異的な組織分布をしつつ、基質タンパク質を選択的に架橋する。その際、各酵素の好む「接着されやすい配列」を明らかにして、高反応な基質ペプチド(12アミノ酸残基)を得てきた。本研究ではこれらの知見に基づいて、接着されやすい「高反応性基質配列」を多面的活用することを目的に次のような成果をあげた。ビオチン標識した基質ペプチドを用いて、この分子がとらえた基質タンパク質を抽出・同定することを試みた。また、骨芽細胞株が2種類のアイソザイム(血漿型、組織型)を共に発現することを見出し、これをモデルとして、それぞれのアイソザイムに特異的な基質タンパク質を同定できることを示した。一方、これまで高反応性基質配列を蛍光標識し、組織中に内在的に存在するタンパク質を検出することで、マウスのいくつかの組織の凍結組織切片を用いて、組織内活性の可視化に成功している。本年度の成果として、アイソザイム特異的な活性の可視化を、マウスの広範な組織を対象にして解析し、新規な発現部位を多数見出した。また、同時にこのアッセイはヒト皮膚表皮の組織活性の可視化にも適用可能であり、本酵素の欠陥に由来する疾患診断に利用できる可能性を示した。さらに、昨年度までに確立した、標識ペプチドを用いた本酵素活性の迅速で鋭敏な測定法が、アイソザイムの特異性を踏まえて測定可能であることを示した。
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