我々は、KSHVによって発症するB細胞性リンフォーマに対する化学療法確立を目的として、KSHV感染特異的にがん細胞に対して殺細胞活性を示す抗腫瘍化合物の開発を実施した。本化合物はKSHVのチミジン・キナーゼ(KSHV-TK)により活性化体となることから、KSHV感染特異的に腫瘍細胞にアポトーシスを誘導し、さらに、ACVやGCVと比べ強いKSHV増殖阻害活性を有している。本化合物は高いKSHV感染選択性と、強いDNA合成阻害活性という二つの優れた特徴を有しているが、薬物の作用機序や薬物動態は不明のまま多数残されている。そこで、本研究では、薬物の作用機序や動態等の解析を実施する。 我々は、米国Johns Hopkins大学医学部との共同研究により、サイトメガロウイルス(GCV)のゲノムにGFP遺伝子やルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだ蛍光性CMVと発光性CMVを開発した。これら蛍光・蛍光性CMVは、野生型CMVと比較して、感染性や増殖性に差は無く、さらに、蛍光・発光測定用マプレートリーダーを解析に用いればハイスループットな薬物アッセイを行なうことができる。この蛍光性CMVを用いて本化合物の抗ウイルス活性を解析した所、本化合物は既存の抗CMV薬のガンシクロビル(GCV)と比較して顕著な抗ウイルス活性を有していた。すなわち、蛍光性CMVを標的にしたウイルス増殖阻害効果を測定したところ、GCVのIC50は5μMであるのに対し、我々の化合物のIC50は0.5μMであった。また両化合物の正常細胞に対するCC50を測定したところ、共にCC50は100μM以上であった。これらの結果より、本化合物は既存の抗ヘルペスウイルス薬GCVと比較して、強い抗CMV活性と低い細胞毒性を有していることが明らかとなった。
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