研究概要 |
大阪府立成人病センターではウシ結核菌ワクチン株の細胞骨格成分(BCG-CWS)を用いた免疫アジュバント療法を実施している。BCG-CWSは菌体精製から得られる巨大分子複合体であり、安定供給には、化学合成可能な代替アジュバントの開発が必要であった。申請者は既知のトル様受容体リガンド構造に生理活性ペプチドを付加・置換し、新たな機能を持つトル様受容体リガンドを開発する「アジュバント・エンジニアリング」を進めており、本研究の中で有力な新規人工アジュバントが得られた。 本年度は1化合物について、特許出願と実用化の基盤となる実験データの収集に努めてきた。リポペプチドの中で強力な抗がん効果(in vivoマウス担癌治療モデル)を示す化合物の多くは、共通した副作用を示すことを確認しているが、ある特化配列を持たせたリポペプチドは強力な抗がん効果を示し、この副作用様症状を回避する事ができた。これは申請者が人工設計で組み込んだ配列が、期待した通りの効果を発揮していると考えている。この化合物に関するin vitro実験(脾臓細胞のサイトカイン産生応答など)も既に評価を進めており、現在抱えている問題点をクリアにする。 また、本研究の基盤となる初期の試作化合物であり、細胞接着能力を強化したリポペプチドに関するデータを、Cancer Scienceへ報告した(Akazawa Tetal, 2010, in press, corresponding author)。
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