研究概要 |
がん・感染症のワクチン戦略において、有用な新規アジュバントの開発が期待されている。我々はマイコプラズマ由来リポペプチド(MALP-2)の構造を基として、化学合成可能な新規アジュバントの開発に取り組んできた。MALP-2はトル様受容体2のリガンドであり、容易に改良可能なペプチド配列を持つ。このペプチド部分に機能ペプチドを付加・置換する事により、付加機能を持つ新規トル様受容体2リガンドを人工設計するアジュバント・エンジニアリングプロジェクトを進めている。本戦略でトル様受容体2リガンドへの付加機能として10種の機能コンセプトを選定し、30化合物以上を作製している。ここから5個の興味深い活性を持つ化合物(A,B,C,CL,D)を得る事ができた。 平成22年度に化合物CがIL12p40の誘導能が高いことを発見した(他のリポペプチドと比較して特殊であった)。さらに、この改良型として作製した化合物CLは、in vitroでIL12p40とIFNγの両方を強力に誘導する有望な化合物であることを確認した。平成23年度は期間延長によって、化合物CLの活性を検討してきたが、in vivoの抗がん効果にこの性質は反映されず、既知のリポペプチドと同程度の治療効果しか示さなかったため、開発を断念した。 一方で、これまでに重点的に開発を進めてきた化合物B(ワクチン・アジュバント投与部位の皮膚炎症を抑え、既知のリポペプチドより強力な抗がんアジュバント効果を示す)について、類似配列を持つ化合物を設計・評価してきた結果をもって、新規人工設計リポペプチドとして特許出願を行った。
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