研究課題
最近、自然免疫においてインフラマソームと呼ばれるシグナル分子複合体が炎症反応の最も初期での病原体や痛風結晶の認識センサーとして働いており、下流に炎症シグナルを伝えていることが発見された。申請者は、このインフラマソームの中心構成分子であるASCが血管傷害後の初期炎症反応に重要であることを見出しており、本年度は、心筋虚血再灌流後のインフラマソームの活性化とその機序について解析を行った。心筋虚血再灌流後の傷害心筋では、ASCの発現が主にマクロファージを中心とした炎症細胞で著明に増加していた。ASCノックアウト(ASC-KO)マウスでは、野生型(WT)マウスに比較して、虚血再灌流後の虚血リスク領域に対する心筋梗塞領域が有意に減少しており、さらに心収縮能も保たれていたが、毛細血管数や末梢血中血管内皮前駆細胞数、アポトーシス細胞数に関しては有意な差を認めなかった。また、傷害心筋部位におけるIL-1βやIL-6、IFN-γ、MCP-1といった炎症性サイトカインの産生もASC-KOマウスで有意に低下していた。さらに、ASC-KOマウスの骨髄細胞を野生型マウスに骨髄置換して骨髄由来細胞のみのASCを欠損させたマウスでは、心筋傷害が有意に減少しており、骨髄由来細胞におけるインフラマソームの重要性が明らかとなった。今後、このインフラマソーム活性化の分子機序をより詳細に検討していくことにより、心筋梗塞や虚血再灌流傷害を標的とした新たな治療法の開発が期待される。
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