脊髄小脳失調症10型(SCA10)の原因遺伝子変異はchr.22q13.3上のATXN10イントロン9に存在するATTCT 5塩基リピートの不安定異常伸長である(280~4500リピート)。この非翻訳領域リピート伸長が、何故どのように優性遺伝様式で病気を発症させるのかは十分に解明されていない。近年、同じく非翻訳領域にCTGリピート異常伸長をもつ筋強直性ジストロフィー(DM)のRNA病態が明らかになってきた。すなわち、伸長CTGリピートがRNAに転写され、CUG転写物がその凝集体(foci)と核内蛋白が複合体を形成することがトリガーとなり、核内RNA蛋白制御不全をもたらすというものである。イントロンに存在するリピート異常伸長により発症するSCA10において、同様の分子病態が関与しているものと考え、検討を行った。 SCA10患者由来リンパ芽球を用いて伸長AUUCUリピートの核内凝集体(AUUCU foci)を確認し、さらにAUUCU fociの核内局在について解析を加え、傍核小体/エクソソームとの共局在を認めた。また、伸長AUUCUリピート結合タンパクの検索を行い、4種の核タンパクを同定した。これらのタンパクはいずれもAUUCU fociとの共局在を認め、その中の1つであるPTBP1においては、その転写調節因子としての機能に障害が生じていることを示す結果を得て、SCA10における神経細胞変性との関連が示唆された。更に、これらの核タンパクの詳細な発現解析と共に、AAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターを用いてマウス小脳内に強発現またはノックダウンさせ、病態を再現またはレスキューできるか検討している。
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