研究概要 |
腸管には特異な粘膜免疫防御システムが備わっていて恒常性を保っているが、クローン病というこの恒常性が破綻した状態がどうやって引き起こされたかを解明することによって腸管の恒常性を保っている腸管免疫機構を解明するために、クローン病の病態において、どのような腸内細菌がマクロファージ(Mφ)を活性化し炎症を惹起するのか、どのようなメカニズムで腸内細菌がMφを活性化するのか、という2つの命題に対して「腸管Mφ内での処理異常による活性化のトリガーが細胞内寄生菌ではないか」という仮説をたてた。これを検証するために、腸内フローラおよび腸管粘膜、粘膜内Mφを分子生物学的に解析することにより細胞内寄生菌の関与を明らかにするとともに、クローン病患者Mφでのオートファジー機能異常と細胞内寄生菌に対するマクロファージの反応異常に重点を置いて研究を進めた。 腸管粘膜より粘膜固有層単核細胞(lamina propria mononuclear cells; LPMC)を分離し、フローサイトメトリーにより、CD14陽性Mφサブセットの存在割合、表面抗原発現解析を行ったところ、炎症性腸疾患患者、特にクローン病患者腸管粘膜においてCD14陽性細胞が著明に増加していた。つぎにLPMCよりCD14陽性Mφを単離し、腸内細菌抗原であるEscherichia coli, Enterococcus faecalisにより刺激し、産生されるサイトカインを測定したところ、クローン病腸管粘膜より単離したCD14陽性Mφは、正常部腸管粘膜や潰瘍性大腸炎患者由来の同一サブセットと比較して、腸内細菌刺激により、多量のIL-23,TNF-αを産生することが示された。 これらの結果より、腸管Mφの機能異常がクローン病の病態において本質的な役割を果たしていることが明らかとなった。また、CD14陽性腸管Mφから産生されるIL-23が、クローン病の腸管炎症において重要な役割を担っていることが示唆された。
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