研究概要 |
本研究は以下の六つの研究項目からなっている。(1) イノシトールリン脂質(PIs)関連酵素欠損マウスの樹立ならびに(2) 高病原性インフルエンザ不活化ウイルス、組換蛋白およびウイルス様粒子の調製、(3) それら(1)(2)を用いたin vivoマウスICU重症呼吸不全解析系による解析、(4) 遺伝子欠損細胞でのin vitro細胞生物学的解析、ならびに(5) 生ウイルスによるマウス感染実験、および(6) 解析データを基にしたPIs代謝系全体の動態の解析、さらにPIs代謝拮抗・活性剤の重症呼吸不全の治療薬としての可能性の探索と検証に分けられる。本年度は、(1) PIs関連酵素欠損マウスの樹立ならびに(2) 高病原性インフルエンザ不活化ウイルス、組換蛋白およびウイルス様粒子の調製、(3) それら(1)(2)を用いたin vivoマウスICU重症呼吸不全解析系による解析を中心に検討を行った。(1) では、全身性の遺伝子(PI3Ks, PIPK Iα/β)欠損マウス、ならびにPIPase, PIK3C3, あるいはPIPK IIIの組織特異的遺伝子欠損マウスを作製し交配を進め、実験に必要なマウスを準備した。(2) では、「1918年スペイン風邪」ウイルスのHAおよびNAが発現しているウイルス様粒子(VLP)を作製した。これはヒト293T細胞にHIV-1 gagとスペイン風邪ウイルスのHAおよびNAのプラスミドを遺伝子導入したものである。このVLPは、マクロファージからのROSの産生を亢進させ、またマウス肺に投与するとHAおよびNAを発現していないコントロールのVLPに比較して呼吸不全が重症化することがわかった。さらに、(3) では、これら(1)(2)を用いて、in vivoマウスICU重症呼吸不全解析系で表現型を解析し、イノシトールリン脂質代謝系がインフルエンザの分子病態に関与している可能性をつかんだ。現在そのメカニズムを含めさらに解析を進めている。
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