研究概要 |
本年度は、樹立したイノシトールリン脂質(PIs)関連酵素欠損マウスを用いてin vivoマウスICU重症呼吸不全解析系による解析ならびに遺伝子欠損細胞でのin vitro細胞生物学的解析を中心に検討を行った。(1)マクロファージおよび好中球特異的VPS34欠損(VPS34 LyM-cre)マウスを作製した。VPS34 LyM-creマウスはコントロール状態では特別な異常を認めなかった。(2)インフルエンザウイルスに感染し呼吸不全を起こした患者がICUで人工呼吸等の治療を受ける状態をマウスで再現するインフルエンザマウスICUモデルを樹立した。マウスに経気道的にインフルエンザウイルス(PR8株)を投与し、呼吸機能解析システムで呼吸機能の経時的変化を解析したところ呼吸機能、エラスタンスの悪化が認められた。(3)同モデルを用いてウイルスRNAの増幅、肺病理所見、サイトカインプロフィール、オートファジー関連遺伝子の発現変化等を経時的に解析した。さらに肺組織を用いて遺伝子発現解析を行った。(4)同モデルを用いてdot plot法で肺組織PIsの変化を見た。インフルエンザ感染に伴いPI(3,4,5)P3、PI(3,4)P2、およびPI3Pが増加することがわかった。PI(4,5)P2の量には大きな変化は見られなかった。(5)VPS34 LyM-creマウスから単離したマクロファージあるいは好中球をインフルエンザウイルスで刺激すると炎症性サイトカインの産生の変化を認めた。現在さらに肺胞上皮細胞特異的VPS34欠損(VPS34 SPC-cre)マウスを作製し、同モデルを用いた感染実験を行っている。このような検討からPI3Pがインフルエンザによる呼吸不全の発症に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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