研究概要 |
本研究課題では,人間の行動計測から全身の体性感覚情報の推定計算,運動情報の記号化とその記憶処理,記号と言語の関係性の抽出処理を基盤として,言語推論を通じた人間-機械コミュニケーション計算の実現を目的とする.今年度に得られた研究成果を以下にまとめる. 1.身体運動コーパスの構築 自動で分節化された膨大な数の人間の運動パターンを記号化,記号間の類似度に基づいた自動階層化を実現した.階層構造を用いて運動記号の時間的相関関係を抽出することによって,人間の運動から未来の行動を予測する装置を構築した. 2.人間の深部身体感覚の推定とその構造化 人間の運動・筋電位計測データから高速に全身の筋張力を推定する計算を実現した.推定した筋電位を視覚化することによって運動中の体性感覚情報を見ることができる装置を構築した.筋張力計算の高速化のため,神経生理学に基づいた筋肉のグループ化手法や全身の関節角度計算の並列化を考案した. 3.自己とモノ,自己と他者の間の関係性コーパスの構築 運動中の人間の視野情報をカメラにて計測し,その画像中の物体認識を行う.認識された物体とその時の運動記号との統計的関係性を抽出した.ロボットが人間の運動からその人の注視先を推定する計算基盤となる. 4.自然言語の情報処理と身体運動の情報処理の融合 文章の連想を上位概念間の連想計算として表現する手法を考案した.入力された情報の文章化,上位概念への変換,次の上位概念の連想,上位概念から文章の作成を通じてインタラクションするシステムを構築した. 5.自然言語と身体感覚でコミュニケーションするヒューマノイドの開発 2者間の会話や行動から得られるインタラクションを文章化し,ある文章から次の文章を推論する手法を考案した.このモデルを通じて,ロボットが他者の推論を予測することが可能となり,その予測の先の結果が最良となるような行動を決定する計算手法を開発した.
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