研究課題
本研究の目的は、意識や内省と呼ばれる自身の心の内部への能動的アクセスの発生過程を、広範な種比較と発達比較により実証的に検討し、それを通じて、他者理解のメカニズムを明らかにすることである。22年度、藤田は、系列学習を応用した情報希求課題において、ハトが自身の知識の有無をメタ認知できる可能性を示した。またフサオマキザルによる他者の社会的評価能力を分析し、自身の利益に無関係な第三者間の相互行為から、その当事者の資質や気分などを認知できることを示した。これら以外に多様な認知機能を並行して分析し、ハトはツェルナー錯視をヒトと逆に知覚すること、ニワトリはハト同様、知覚的補間をしないこと、キーアは複数のカギを外す問題解決課題、簡単な計画性を示すこと、フサオマキザルは道具使用において、道具と目標物と環境の3者を考慮に入れた行動をとること、などを示した。板倉は、ロボットに社会的行為を付与したものと非社会的行為を付与した刺激を呈示し、fMRIによる脳活動を記録した結果、サンプル数はまだ少ないが、両条件ともメンタライジング領域と、左側のミラーシステムの活動があがる可能性を示した。明和は、ヒト乳児-養育者間の情動情報共有に関する知覚、認知実験をおこない、ヒトは生後18カ月頃には、養育者の情動状態を文脈に応じて適切に共有(共感)し、さらに自らの反応を調整する能力を発達させることを示した。平田は、チンパンジーを対象に、タッチパネルを用いた遅延見本あわせ課題および系列課題において、情報希求行動の使用に関するテストをおこない、チンパンジーが、自身の学習の習熟度に合わせて情報希求行動を柔軟に利用することを示唆する結果を得た。
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