研究課題
言語脳科学からのアプローチに関しては、手話と音声言語との脳内処理の対応を明確に示すために、日本手話を対象とする新たなfMRI実験の準備と並行して、健常者および脳腫瘍患者を対象とするfMRI実験を進めた。ろう児およびろう者を対象としたfMRI実験はH22年度より実施している。日本手話の単語・文法・文章理解の3段階に対応して、左前頭葉の活動が背側から腹側へと段階的に広がっていき、特に文章理解では左優位ではあるが両側性の言語野の脳活動が観察された。これは、「文法中枢」が音声言語だけでなく手話の統語処理でも必要とされることを示す初めての明確な証拠である。Neuro2011学会での演題提出を済ませ、論文執筆に向けて順調なスタートを切った。言語教育学からのアプローチに関しては、新しい日本語習得ゲームの開発が実現し、既に最初の実施と評価段階まで進んでいる。この成果は、1報のオリジナル論文や研究発表として既に発表済みであり、当初の目標に向けて順調に研究が進展している。日本語ゲームを実施した小学3年生から中学1年生までの全生徒20名の解答データをもとに集計を行ったところ、問題の中でも正答率が高いものは、仮名の問題と漢字書きの問題であった。一方、正答率が低かった問題は、漢字読みの問題と文法の問題であった。今後、個々の問題の視点のみならず、個々の生徒の学習プロセスの視点からも分析を進める必要があるが、本ゲームによって、生徒たちの日本語能力の一部が把握できたことは意味がある。日本手話能力の育成、思考力・学力の伸長の次に置かれていた書記日本語能力にも、今後一層の注目が必要である。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (9件) 図書 (3件) 備考 (1件)
ミニ・アカデミックグルーヴCHOICE
ページ: 27&32
http://mind.c.u-tokyo.ac.jp/index-j.html