本研究は蛍光分光電極法を開発し個体脳での神経活動解析に応用する事を主な目的とした。特に、聴覚系の神経活動解析への応用を目指して研究を進めた。結果として両方の目的はおおむね達成された。蛍光分光電極法はパッチ電極を光導体として、蛍光色素を充填した神経細胞をレーザー照射し、色素が発する蛍光を同じパッチ電極を用いて神経活動に伴う電気信号と同時に記録する手法である。神経細胞に充填した色素の蛍光スペクトルを時系列に記録する手法として確立した。個体脳への応用では細胞内Ca濃度に応答するオレゴングリーンBAPTA-1(OGB-1)をトリ聴覚神経核の神経細胞に充填し、聴覚応答の解析が実現できた。聴皮質であるField-Lからは神経活動と完全に同期したCa応答を記録解析した。GABA性の抑制性神経活動を阻害することにより1Hz程度の徐波が増強され自発的なCa応答を引き起こした。さらに下丘からも聴覚応答をCa信号として記録し、個体脳深部から蛍光信号を電気信号と同時に記録する当初の目的は達成した。
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