研究課題
再建外科治療と移植治療に並ぶ第3の治療である再生医療には2つのアプローチがある。1つ目は、細胞移植による生体組織の再生誘導である。2つ目が、バイオマテリアルと医工学技術を利用して、細胞の増殖分化を促し、生体組織の再生誘導を起こす生体組織工学アプローチである。本研究の目的は、この2つのアプローチを組み合わせ、移植に用いる幹細胞の生物機能を高めるための生体組織工学技術を開発することである。遺伝子導入のための非ウイルス性材料として、プルランやデキストランなどの多糖ヘスペルミンを化学導入することでカチオン化多糖を作製した。動物の骨髄より単離した未分化間葉系幹細胞(MSC)を用いてプラスミドDNAの細胞内導入と遺伝子発現を調べたところ、MSCに対しては、スペルミン導入プルランが優れていることがわかった。次に、ゼラチンからなる3次元スポンジに、得られたカチオン化多糖とプラスミドDNAとの複合体を含浸させた後、MSCを播種、遺伝子導入のための培養を行った。その結果、幹細胞に効率よく遺伝子が導入され、その発現が認められた。カチオン化多糖-プラスミドDNA複合体のスポンジへの含浸方法について検討したところ、複合体濃度と含浸後の熱処理が遺伝子発現レベルに影響を与えることがわかった。また、サル骨髄から採取したMSCをカチオン化プルランとプラスミドDNAとの複合体コーティング基材上で培養したところ、細胞にプラスミドDNAが導入され、その神経分化誘導効率が有意に上昇した。今回の方法は、培養液中に複合体を加える通常の遺伝子導入法および市販のカチオン化脂質を用いた遺伝子導入法に比較して、細胞の神経分化誘導効率は高く、かつ細胞毒性の低いことが確認された。
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Tissue Engineering Part A 15
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